日本人に評価される外国人はなぜ他の外国人に評価されないのか? ①
2020.05.13
Nick塾<グローバルよもやま話> 異文化マネジメントに関して(全三話・第一話)
「Nickさん、日本人に評価される外国人社員が、同じ国、或いはその地域の現地(ローカル)社員に
あんまり評価されないのですが、何でですかね?」
グローバル人財育成やグローバルプロジェクト展開のコンサルティング・お手伝いをしているグローバルビジネスに携わっている日本企業の皆さんと仲良くなると、この本音系の話が良く出ます。
どちらかといえば、居酒屋トーク的なお酒の席が多いかな。(笑)
なんだ、酒の肴系の話か、ということなかれ。
話の中身そのものはかなり示唆に富んでいる異文化対応・異文化マネジメント、
そして我々日本人、日本企業の「クセ」のお話です。
一例をあげると、こんな感じです。
グローバルビジネスを展開する日系企業は
海外現地法人(現法)の経営者や経営の主要ポジションを任せる人間をアサインする必要に迫られます。
自力による海外展開であっても、M&Aの結果であっても。
日本本社から海外赴任する日本人がそのポジションを務める場合もあります。
が、より現地化・グローバル化を志せばおのずと人選の対象は
その国ローカル、或いは文化的・ビジネス的背景の似通った国々の「外国人」を起用することは極めて日常的なことです。
日本人から見てという意味です。海外では日本人が「外国人」ですが(笑))
コンサルティングをしたクライアント企業での経験や、自身のサラリーマン時代の記憶に遡ると、
この「日本人にはやたら受けがいいのに、外国人同士では逆になぜか評価の低い」外国人(特にシニア層)の例は、実はそこここに枚挙に暇がないのが現実です。
日本人にウケるウケない程度の話なら酒の肴レベルで終わりですが、ことは結構深刻な場合も少なくありません。
当該国・地域の他のビジネス関係者や他の外国人社員(ローカル社員)に必ずしもリスペクトを受けない人間(能力・人格共に)が
なぜか日本人の受け(日本本社や駐在社員)だけはよいことがままあります。
そういう人格・能力に見合わない人物が経営層の重要なポジションを務めたために、業績は下降、若しくは伸び悩んだり、
或いはその人間に連なる人々が組織に蔓延り、「悪貨は良貨を駆逐する」ような状況になる事例が少なくなくありません。
これ、明らかに「失敗」ですよね。
それらの“まがいもの系”に共通して言えることは、
・「日本人の喜ぶツボを熟知している(はやりの言葉でいえば忖度上手)」
・「やってる感を出す・アピールはうまい(神業レベル)」
・「ポリティカルコレクトネスへの嗅覚・ゴマすり能力も高い(腹の中・本音では逆に日本人や日本式をリスペクトしていない例が殆ど)」
・「本社や駐在員が感じる言語的・文化的壁を自分なら取り除けるというアピールがうまい」等、日本人の好み・弱みのツボをこれまた熟知している
同じ環境を経験した方みなさん。
にやりと笑いながら、「だよなあ」とうなずいて頂けるのではありませんか?
一方、ローカルの番頭さんレベルの中には、それらの”まがいもの系”ではなく、極めて日本人に近いセンチメントをもったロイヤリティの高い人もいないわけではありません。
が、多くの場合、そのローカルビジネス社会で実力では生き残れないような、人の好さだけが売り物の人物が多い、というのも偽らざる現実です。
「あいつ、今一つなんだけど、いい奴でがんばっているんだよなー」的な。
「いい奴でも結果を出せない奴」は本来、ビジネスでは、ダメな奴、なのでしょうが。
どこかの国の国会で、答弁を全くできない大臣も「いい人なんだけどなあ」的な。おっと、筆が思わず滑りました。(笑)
さて、少しだけ私自身のサラリーマン時代の経験をお話してみると・・。
若干のデフォルメはしていますが、実際にあった話です。
まあ、こんな話はどこにでも転がっているでしょうが。
当時、私はグローバルにビジネスを展開する国際海運企業の国際投資案件担当の本社課長。
起用したそのビジネス領域では超有名人の米人コンサルタントと世界中を飛び回り、投資案件の掘り起こしをする毎日。
ある時、欧州地域のかなり高いポジションにいた欧州人(英人)と投資案件に関して協働することになりました。
当時の私のビジネス領域は、彼自身が積み上げたビジネスバックグラウンドと重なっていました。
彼も当然その分野には一家言を持っていることから、我々は度々プロジェクトの方向性に白熱した議論を行いました。
会社の序列的には、数段、彼の方が上で、この業界での経験もそこそこ。
「おー、これは頼りになる」と最初は思っていたのですが、でも、よーく話を聞いていると、「???」という発言も頻繁になり、「なんだかなー」と。
ま、これもよくある話。
そんな、彼に流ちょうな英語でまくしたてられると普通の日本人であれば唯々諾々となるところ。
なのですが、私は普通の日本人ではないので(笑)必要以上に譲る気配は全くなし。
彼からすればやや勝手が違う、実に御し難い日本人であったと思います。
一方、私が頼りにしていた優秀かつ業界では断トツの実績を持つ相棒の米人コンサルタントにはこの英人シニアも一目も二目もおいていました。
私には上から目線の発言がやたら多いのに、米人コンサル氏には手のひらを返したような阿る態度。
「おいおい、わかりやすすぎるだろうー」と。(笑)
相棒の米人コンサルに意見を求めると、彼も私の意見に全く同意。
ここで、誤解の無いようにしておきたいのですが、
米人コンサル氏は忖度という言葉の文化とは対極のところにいる典型的なアメリカ人のデキル奴。
その上、日本を含むアジア人とのビジネスにも深い経験と造詣がありました。
彼に言わせれば、
「お前の会社は何であんな無能なゴマすりを重用しているのだ・・。」
「何であんな奴があのポジションにいられるのか全く分からない」と米人コンサル。
「ま、でも、ゴマすりは絶妙だから(笑)」と私。
「アメリカだって、そんな奴多いだろう」と私が切り返すと
「確かにそうだがあいつは酷すぎる。お前の会社の評価のスタンダードはどうなっているのか?」と。
また、「実はどうなのよ」と、それとはなしにローカル社員のプロジェクト仲間に聞けば、「Nick、ここだけの話だよ」、という前振りの後、出るわ出るわ、
「Nick、何で本社はあんなゴマすりをトップのポジションに置くのだ」
「ゴマすりだけなら目をつぶるがあいつビジネス、なんもわかってないぞ」
「東京やエリアトップの○○さんは、実態を理解しているのか」
などと、突き上げに似た告発を激しく受けました。
「でもなー、上層部の皆さんは、あいつはよくやっている、できるやつだ、とか言ってるんだよな。
そんなことはないのでは、と僕が言うと、お前はわかっていない、とか言われるしなあ」と苦しい言い訳の私。やれやれ。
一方、力と力の勝負が時にビジネスのルールになる欧米ビジネスの現場。
件の英人シニアマネジメントもこの米人コンサルの力量と類まれな実績が自身のそれに比べはるかに優れいている、ということを理解する最低限の聡さは持ち合わせており、
本社や周りのローカル社員たちへの「この分野は俺の分野だ」という熱意のこもったアピールは念入りに行う傍ら、気持ちの悪いぐらいの米人コンサルへのすり寄りは続きました。なんだかなー。(笑)
そして、物語は次号に続きます。 Stay Tuned!
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